
Edition 22/ FranceⅢ
FranceⅢ
フランスⅢ – はじめに
第22回特集は、これまでにフランスⅠ・Ⅱで訪問した各都市の街の表情をフォーカスして
フランスⅢとして掲載します。とくにパリ編では初めて訪問した1974年当時の写真も載せ、同一地点での “時空を超えた” スナップなどを交えながらご紹介します。また、SNCF(フランス国鉄)についてもフランスⅡの続編として、リヨンからアヴィニョンを経てモナコ・モンテカルロに至るTGVの記録を併せてご案内します。
*Metz & Nancy
メッスとナンシーの2大都市を抱えるロレーヌ地方はドイツ語でロートリンゲンと呼ばれるように、古くから隣のアルザス地域と共にドイツとの領土紛争に翻弄されて来た地域だ。現在でもモゼル県の中心都市メッスはドイツ系住民が多く住む町として知られ、街並みも何処となくドイツ風で、特にメッス中央駅などは重厚な佇まいである。メッスはステンドグラスの街として知られ、シャガールの作品もあるサン・テティエンヌ大聖堂「Cathedrale Saint Etienne」のステンドグラス群を前にして、その圧倒的な迫力に思わず目を見張る。
ナンシーは東西ヨーロッパ交易の十字路として栄え、この地の領主であった元ポーランド王、ロレーヌ公スタニスラスが造営させ、その名を冠したスタニスラス広場がある。世界文化遺産に登録されている美しい広場は、ルイ15世統治時代の「ロココ様式の至宝の広場」といわれる。アールヌーボーが誕生した町でもあり、現在も市内のいたる所でアールヌーボーの優雅な建物を見ることができる。エミール・ガレやドーム兄弟が工房を構え、そしてバカラ・グラスの故郷でもあるナンシーはまさに絢爛たる芸術の花が開いた土地であった。
*Paris
今更パリについての案内も説明も要らないであろう。筆者が昔撮ったパリの写真の多くは紛失してしまっており、2000年以降の最近のデータが中心となる。しかし、一部であるがミュンヘン時代の写真が残っており、時空を超えた記録として掲載したい。また、ルーブル美術館のデータは完全に紛失してしまったが、オルセーやオランジェリー美術館、ポンピドーセンターなどの写真は残っているのでこれも併せて掲載したい。
*Lyon
ローヌ・アルプ地域圏の中心都市であるリヨンはローマ時代の植民都市までさかのぼる古い歴史をもつ。ソーヌ川右岸には中世そのままの佇まいが残る旧市街があり、有名な「トラブール」という建物と建物を結ぶ無数の抜け道がまだ残り、実際に通行も可能だ。リヨンのランドマークであるフルヴィエール寺院もこちら側の山腹に建っていて、リヨンの街並みを見下ろす白亜の聖堂として親しまれている。
この古い街並みを残す旧市街地区は「サン・ジャン歴史地区」として世界文化遺産に登録されている。また、ローヌ川とソーヌ川に挟まれた地区は新市街となり、ベルクール広場を中心に広がっている。
*Avignon
アヴィニョンといえば真っ先に思い浮かぶのが、アヴィニョン法王庁であろう。南フランス、プロバンスの中心都市で、14世紀初頭にカトリックの総本山であるローマ法王庁がこの地に移された。以来68年間に亘りアヴィニョン法王庁のお膝元として町は栄えていった。
旧市街地は全体が城壁で囲まれていて、その北側には童話「アヴィニョンの橋の上で」で有名なサン・べネゼ橋が今も半壊の状態で残っている。この由緒あるアヴィニョンの町は法王庁宮殿とサン・べネゼ橋がセットで、「アヴィニョン歴史地区」として世界文化遺産に登録されている。
*TGV & SNCF, French Railways
フランスⅡに引き続きリヨン・パールデュ駅からアヴィニョンTGV駅を経由して、ニース駅までのTGVを紹介する。また、さすがフランスと感じさせるスタイリッシュなデザインのアヴィニョンTGV駅と、1999年に完成したモナコ・モンテカルロ駅の優雅な地下駅の状況を併せて案内したい。
*「世界のリーディングホテル」は現在「週刊ホテルレストラン」で隔週刊第2・4週号にて連載中。
http://www.hoteresweb.com/columntop
- 2012-05-23 (Wed)
- Edition 22/ FranceⅢ
Metz & Nancy, Town goings on
メッス、ナンシー – 街の様子
市内中心部を流れるモーゼル川の中州に建つタンプル・ヌフ教会「Tample Neuf」。
一見、中世の教会に見えるが、実は20世紀初頭にドイツ人によって建てられたものだ。
メッスはドイツ国境に近く、パリに行くよりフランクフルトの方が近いという位置関係だ。
ドイツ系の住民も多く、街並みも何処となくドイツの雰囲気が漂う。
メッスでの最大の見どころは、このサン・テティエンヌ大聖堂「Cathedrale Saint-Etienne」
であろう。建設に1220年-1520年までの、実に300年を費やしたといわれる。
高さ42mの大聖堂は世界で最も高い中世建築の1つといわれる。
アーチ状の天井の下にはヨーロッパでも最大級の面積を誇るステンドグラスがある。
実に6500㎡のステンドグラス総面積を持つ美しい大聖堂内部。
13世紀から20世紀まで、さまざまな時代の作品を鑑賞できる。
その20世紀にシャガールが手掛けた部分は、ここの見逃せない作品群である。
大聖堂には一連のシャガールの作品があり、「ヤコブと天使の戦い」などのテーマがある。
これほど壮麗なステンドグラスを持つゴシック建築は世界でも極めて稀である。
いつまでも眺めていても決して飽きることのない至福の空間だ。
スタニスラス広場から望む「Cathedrale de Nancy」ナンシー大聖堂。
広場は壮麗な金と黒の色彩対比が圧巻の鉄柵の門に囲まれている。
大聖堂とその前を走る路面電車。
1本しかないレールを見て頂きたい。実はこの路面電車はゴムタイヤとトロリーポール
を持つトロリーバスの派生形なのだ。中央のガイドレールに沿って走行する。
スタニスラス広場の奥まった所にある凱旋門をくぐると趣の違う美しい広場に出会う。
カリエール広場だ。スタニスラス広場とセットで設計された広場で、絶妙なバランス
を保っている。正面の建物はロレーヌ官邸であり、この広場も世界遺産に登録されている。
カリエール広場側から凱旋門をくぐると市庁舎が目の前に見えて来る。
ライトアップされた美しいナンシー市庁舎の建物。
逆に市庁舎側から見た美しい凱旋門。
スタニスラス広場のコーナーにある「ネプツネスの噴水」から見るオペラハウスと
その向こうに並んで建つグラン・ドテル・ド・ラ・レーヌ。
広場の中心に立つ銅像の台座には、「スタニスラス・レスチンスキー、ポーランド王、
ロレーヌ公」と刻まれている。ライトアップされた世界でも稀にみる美しさの
「ロココ様式の至宝の広場」である。
*スタニスラス広場の詳細については、Edition 21/ FranceⅡを参照されたい。
- 2012-05-23 (Wed)
- Metz & Nancy
Paris, Town goings on
パリ – 街の様子
1974年のパリ初訪問時、マドレーヌ寺院を背景にして撮った1枚。金曜日に仕事を
終えてミュンヘンから夜行列車を利用し、土曜日朝にパリ東駅に着く便利さが魅力だった。
その後何度もパリを訪れたが、これは2005年訪問時に於けるマドレーヌ寺院。
以後定点観測ならぬ、時空を超えた写真として、同位置のマドレーヌ寺院で撮ることにした。
これは2011年訪問時のもので、最初の写真から実に40年近くが経過している。
1974年、エッフェル塔を背景にしたパリで定番の写真。
そのエッフェル塔展望台からのパリ北側方面の俯瞰。
真下のシャイヨ宮から遥か向こうに、ラ・デフェンスの新市街を望める。
驚くことに40年近く前のデータだが、新市街域に高層ビルがすでに何本も立ち並んでいる。
凱旋門の上部展望台。隣のアメリカ人観光客の様子が時代を感じさせる。
ここはエッフェル塔と同じく、上部の展望台に登ることができる。
ノートルダム寺院の側面を背景にした1枚。
そのノートルダム寺院の正面を背景として2005年に撮影。
「Four Seasons George V」の正面ファサード。
George Vは1998年にフォーシーズンズの傘下に入る。
その結果ジョルジュ・サンク自体、どの様に変化したのか気になり訪問した時のものだ。
「Hotel De Crillon」の正面ファサード。
クリヨンの正面エントランス。まさに宮殿の面影である入口の鉄柵が残っている。
「Plaza Athenee」の正面エントランス。
優雅な曲線を持つアールデコのキャノピーがアクセントになっている。
オペラ大通りから俯瞰した、オペラ・ガルニエの正面ファサード。
オスマン大通りから俯瞰した、ギャラリー・ラファイエットの建物。
1885年、サン・ジェルマン・デ・プレ地区に創業したカフェ「Les Deux Magots」。
サルトルやボーボワールなど文豪たちが通ったサン・ジェルマンの老舗カフェである。
右手に見えるのはサン・ジェルマン・デ・プレ教会で、現存するパリ最古の教会の1つだ。
サン・シュルピス教会方向に向かう、いかにもサン・ジェルマンの空気が漂う風景。
この辺りは多くのカフェやショップで賑わうお勧めのスポットだ。
レ・アル地区の中心付近の風景。右手はかつての中央市場を再開発したフォーラム・デ・アル。
左手に見えるカフェは「Au Pere Tranquille」で、筆者がよく通ったカフェだ。
レ・アル地区はCDG空港からRER利用でダイレクトに来られるので便利なエリアである。
レ・アルのすぐ北側に延びる、エティエンヌ・マルセル通りの東端に位置するヴィクトワール
広場。最近、このエティエンヌ・マルセル通りは小粋なショップが集まり注目だ。
レ・アル地区とマレ地区の間にポンピドーセンターがある。
ここはポンピドーセンター前に可愛らしい建物が並ぶ小広場だ。
1977年にポンピドー大統領の名を冠して開設された、フランス最大規模を誇る現代アート
センターである。当初はこの万年工事中のような外観に非難が集まったが、現在はその現代的
を通り越した前衛的とも呼べるデザイン性に、建物自体が芸術作品として評価が高い。
ガラスのドームで覆われたエスカレーターを乗り継いで、トップフロアまで上がって行ける。
トップフロアからの眺めは素晴らしく、
こちらはモンマルトル方向のサクレ・クール寺院の眺め。
お馴染みのシャンゼリゼー大通りから眺めた凱旋門。
シャンゼリゼーからジョルジュ・サンクに入る角地に立地するルイ・ヴィトン本店。
2005年当時は大改修中で、巨大なトランクを模した覆い塀に注目が集まった。
セーヌ河左岸に位置するオルセー美術館。もともとはオルセー駅の鉄道駅舎兼ホテル
であったが、1986年に印象派の作品を多く収集した美術館としてオープンした。
オルセー美術館の個人ビジター用の入口。
オルセー美術館の内部。正面奥に掛かって見えるのがオルセー名物の大時計だ。
駅舎時代から使用されていたもので、ターミナル・オルセーの面影を色濃く残す。
反対側から俯瞰した美術館内部。
駅舎時代の面影を残す天井アーチが美しい。
美術館内部にはレストランやカフェの施設がある。
上部回廊から見下ろしたカフェ店内の賑わいの様子。
セーヌ河に掛かるアルマ橋のたもとに自由の炎のモニュメントがある。
1989年に米仏友好の証としてアメリカ側から寄贈されたものだが、故ダイアナ妃の
悲劇以降、妃を偲んで花束が絶えない「ダイアナ記念碑」としても有名になっている。
久しぶりのコンコルド広場の一角。左手遠くにエッフェル塔が見える。
コンコルド広場南端のチュイリー公園内にオランジェリー美術館がある。
実は前回の2005年訪問時は、大改装修復の真っ最中で館内を見ることができなかった。
荷物を預けてからチケットを見せて入場する。
長らく再オープンを待ち望まれたが、2006年5月17日にその扉は開かれた。
クロード・モネの最後の大連作「睡蓮」を飾るこの美術館の大改装が始まったのは
2000年1月であった。6年の時を経てモネの望む陽光に満ちた空間を取り戻した。
その「睡蓮の間」に向かうホワイエ内の連絡ブリッジ。
残念ながら「睡蓮」は警備が厳重で写真は撮れなかったが、
筆者の大好きなマリー・ローランサンの展示室では気軽に撮ることができた。
フォーブル・サントノレ通り、ル・ブリストル近くに威容を構えるエリゼ宮。
フォーブル・サントノレ通りをエリゼ宮からヴァンドーム広場方向に進むと、
右手に日の丸が掲揚されている日本大使公邸が見えて来る。
ヴァンドーム広場を過ぎてさらに進むと、左手にガラスで覆われた不思議な広場に着く。
マルシェ・サントノレ広場で、付近は食材を扱う店やレストランが多い。
ここから左に進路を進めると、カサノバ通りを経由してヴァンドーム広場に戻って来られる。
古い歴史的建物が残るマレ地区にある、パリで最も美しい広場の一つであるヴォージュ広場。
「官製」の雰囲気がするヴァンドーム広場に対して、「芸術」ともいえる自由の味わいが漂う
ヴォージュ広場だ。
広場を取り囲む回廊の一角に「DAMMANN」というお茶を扱う店がある。
店内の見事な商品ディスプレイ構成で、その芸術的・美的センスに感激する。
実はパリのセレブリティーの間では、日本の「南部鉄瓶」がひそかな流行になっている。
かなりの高額値段が付いているが、ハイソサエティーのお茶会などでよく使われるという。
ヴォージュ広場から地下鉄サンポール駅に向かう地域には、
このような味わい深い通りがたくさんある。
地下鉄パリ東駅ホームの乗り換え風景。
東京の銀座線に当たる地下鉄1号線のジョルジュ・サンク駅。
何とも言えない小粋な感じのホームの風景だ。
それから6年後に撮った隣駅のフランクリン・ルーズベルト駅の様子。
日本語を含めた5か国語の駅名表示やモダンな椅子など、雰囲気はがらりと変わっていた。
パリでごく普通に運行されている市内バスに乗ってみた。
こちらは地下鉄の車内。アコーディオン弾きのオジサンが楽しい。
- 2012-05-23 (Wed)
- Paris
Lyon, Town goings on
リヨン – 街の様子
ソーヌ川から眺めたリヨン市内。ソーヌ右岸側が旧市街でフルヴィエールの丘に向かって
なだらかに続き、左岸側はもう1本並行して流れるローヌ川と挟まれた新市街となる。
ソーヌ川に掛かる歩行者用のつり橋から旧市街を眺める。
リヨンのランドマークであるフルヴィエール寺院が真正面に見える。
ソーヌ川左岸に沿った遊歩道にこの様な朝市が立つ。
新市街の中心にあるベルクール広場。
ルイ14世の騎馬像の向こうにフルヴィエール寺院が望める。
世界文化遺産に登録されている旧市街の歴史ある石畳の狭い路地。
右手はちょうどクール・デ・ロジェの建物で、「COUR DES LOGES」の文字が見える。
旧市街のメインストリートの風景。「トラブール」という抜け道もあちらこちらに残っており、歩いているだけで楽しくなる。サン・ジャン大司教教会に続く道で、旧市街の中心になる。
先ほどの石畳のメインストリートを歩いてくると、サン・ジャン大司教教会に辿り着く。
リヨン旧市街の世界文化遺産「サン・ジャン歴史地区」の中心に位置するゴシック大聖堂だ。
大司教教会前の広場からはフルヴィエール寺院が目の前に迫ってくる。
左手の建物の中にケーブルカーの乗り場があり、数分で丘の上に立つことができる。
一瞬、分かりづらい建物の中にターミナル「Vieux Lyon」駅があって、この下には
地下鉄駅D線と連絡している。このホームから2方向に別れてケーブルカーが運行する。
右手の「FOURVIERE」の指示に従って進むとこのホームに連絡する。
駅を出るとすぐにトンネルに入り、終点まで残念ながら景色は楽しめない。
終点のフルヴィエール駅に到着。駅舎も地下駅となっている。
ケーブルの地下駅から地上に出ると、目の前にフルヴィエール寺院が姿を現す。
寺院としては比較的新しく、19世紀末に市民の寄付で建設が始まり1884年に完成。
内装に時間が掛かり、すべてが完成したのは1964年のことである。
外装はわりとシンプルなロマネスクとビザンチン様式の建物であるが、
内部の精緻かつ荘厳な雰囲気に思わず圧倒される。
正式には、「ノートルダム・ド・フルヴィエール・バジリカ大聖堂」という名称である。
内部はモザイクと大理石を多用した大天井の精緻な造り、そして重厚かつ荘厳な空気が漂う。
フルヴィエールの丘の上に建つため、その景観はリヨンの街並みを一望できる。
リヨン市街の大展望。手前に見えるのがソーヌ川で、後方にローヌ川が流れる。
この2つの川に挟まれた地域が新市街で、その向こうの再開発地区に高層ビルが立ち並ぶ。
ペンシル型の超高層ビルにはラディソン・ブリュ・ホテルが入っている。
手前にサン・ジャン大司教教会が見え、
その向こう、新市街の真ん中にベルクール広場の大空間を確認できる。
リヨン地下鉄の “旧市街” 「Vieux Lyon」駅は先ほどのケーブルカーと連絡しており、
ここからベルクール広場まで地下鉄D線を利用する。
便利、軽快、スマート、モダン・・・。
言う事なしの地下鉄だ。車両先端部分にある立腰掛のデザイン性を大いに評価したい。
車内の様子はこんな感じで、明るさとスマートさが際立つ。
- 2012-05-23 (Wed)
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